ハイハットオープンワーク

ドラムで最も奥が深いのがハイハットの叩き方ではないかと思います。
ボウ(上部)、エッジ(横)、カップ(突起)の叩き分け。
オープン、ハーフオープン、クローズ。
踏んで鳴らしたり、スプラッシュ奏法もあります。

初心者にとって一番わかり辛いのがオープンワークで、なんとなくでもまあいけなくもないけど、なかなかうまくできない、フレーズがぶれる、音が汚い、となりがちなところかなと思います。こうしないから、ぶれる。こうしないから音が汚い。などなど解っておくのが初心者から中級者にランクアップするポイントだと思います。

まず基本的にハイハットは踵を下げて、ヒールダウンで開閉します。
バスドラムはヒールアップで習うので大体間違えるのですが、ヒールアップでオープンすると滞空時間が長いため体のバランスが崩れてしますので、オープンワークは基本的にはヒールダウンです。

そしてエッジに重さを残すようにしてスティックを押し付け気味に叩きます。つまりアクセントをつけるのが基本になります。まずボウにノンアクセントでオープンを叩きにいくとハットの上だけが鳴り、また本当に間抜けな音しか鳴りません。これが録音して聞くと叩いているときよりも軽く聞こえてきます。しっかりとしたサウンドを得るためには上のシンバルに加えてボトムのシンバルも鳴り両方がジャリジャリとぶつかり合う必要があるので、エッジを狙います。そしてボトムまでしっかりアタックを伝え、更にサステイン(音の長さ)をキープするには、アクセントを付け、押し付け気味に叩く必要があります。この感覚は色んな人の叩き方を見て真似してみてください。

またキレのある音を出すためには、まず左足の動きがしっかり音符を意識し、キレ良く動く必要があります。オープンのときに前のめりに空いてしまうとクワーンという音が先行して鳴ってしまいます。また空くのが遅いとオープンのサウンド自体が尻上がりになってしまいます。クローズも同様で早いとクローズの音とスティックで鳴らす音の二つが鳴ってしまいますし、遅いと全くキレの悪い残尿感の高い音になってしまいます。加えて左足はオープンする分量を調節しなければなりません。

ハイハットオープンワークはこの基本をおさえておきましょう。

実際はここからさらにサウンドやグルーヴを意識して叩き方にアレンジを加えていきます。軽めのサウンドを出したいとき敢えてボウを叩き空ける量を減らすことでボトムを鳴らしたり、押し付けては叩くのですがあくまで弱めに叩いて柔らかい音を出したり、サステインを伸ばすためにハーフ気味にしたり、スカ独特のカップの鳴らし方をする為にトップのシンバルだけ鳴らしたり。

やはりハイハットは奥が深いです。

ダブルキックの踏み方

初心者から中級者へ以降するポイントというのがいくつかありますが、ダブルキックを踏めるようになるというのは一つ脱初心者のポイントではないかなと思います。

ドドッとバスドラムを高速で2連打することダブル(キック)と呼ぶのですが、単純に踏んでもムキムキなフィジカルがある人はまあある程度の速さまで踏めるのですが、やはり持久力、速さが全く変わってきます。それほど踏み方が違ってくるのですが、大きく分けて2つあります。

1.スライド
2.爪先&踵

基本的に体の動きは似ているのですが、この二つの踏み方でドドッと踏めるようになります。

スライドの踏み方は、文字通り足をスライドさせます。
まずペダルを手前で一度踏んで、ペダルが落ちて跳ね返ってくる間に足を奥に滑らせてもう一度踏みます。うまく足首を柔らかく使い踵が高いところにあるうちに手前で踏み、踵を下ろすことで足が前に自然と出てゆく動きを利用して前に滑らせてもう一度踏む。ペダルの跳ね返りをうまく感じることがポイントです。

爪先&踵で踏む場合は足を始めから奥に構えて、爪先で一度踏み、スライドと同じく足首を柔らかく踵を下ろして、こちらは下ろした踵で踏みます。
こちらの方が少し難易度が高く足が大きいとやり辛さはありますが、しっかりと2打鳴らしやすく、またVRUKペダル(片足でツインペダル並みに踏めるという高速化アイテム)という特殊な器具に対応した踏み方となっています。

初めは中々できない人もいるのですが、膝と足首の使い方が柔らかいことが一番のポイントです。

またサウンド的に頭にアクセントがつき易いのですが、2打のサウンドが均質になるように練習し、ヒップホップのようなビートの終わりから頭にかけて連打するようなフレーズの際は2打目にアクセントを置いたり、32分のドラッグ的に高速で踏んだりできるようになるまで練習をしてゆきましょう。

体幹トレーニング

ドラムを叩くにあたって大事な2つのことはなんでしょうか。

1つはストローク
2つ目はフォームです。

この二つはドラムを叩くにあたって全ての動きの根幹になり、これが良くないとどうやってもうまくなれません。また多くの場合故障の原因となり、プレイヤーとしての寿命を縮めることになります。

ストロークとフォームは地続きで、スティックから指、手首、肘、肩と来て体幹へと連動してストロークします。
実際の大きいストロークの際は肩から肘で引っぱり、手首を外回転させて、指を軸にスティックを振る、という連動した動きになり、このどこかがうまく駆動しないと体に大きく負荷がかかり、故障しやすくなります。

キックもまた同じように腰まで連動して動かします。
ランニングでも同じですが完全に脱力し力を逃がす4肢の動かし方、その全ての中心になるのは体幹です。

脊柱起立筋などのインナーマッスルを鍛えることで安定感と疲れにくい体を作ることができます。

とは言ってもどうやって鍛えればいいのか、という話ですが、そんなに難しい話ではありません。ちょっとしたヨガのつもりでおうちで鍛えられます。

例えば

●四つん這いになって片足を真っ直ぐに上げ、反対の手も真っ直ぐに上げ、姿勢を5秒間維持、反対の足と手でもう一度、これを10セット。

●仰向けの姿勢でお尻を持ち上げ、5秒間、これを10セット。

●仰向けで両膝を持ち上げ、5秒間…など

ドラムは腰への負担も大きくツインペダルを踏んだり、大きい動きでパフォーマンスすることが多い方などは、体幹レーニングをお勧めします。
平行してストレッチとクールダウンも忘れずに。

John Bonhamのチューニング

以前リットーミュージックのジョンボーナム(Led Zeppelin/drums)の本を読んだのですが、機材の話が多くとても面白かったです。

例えばジョンボーナムのスネアの音ってどんなだろうと想像するとき、ヘヴィメタル、ハードロックの源流となったLed Zeppelinというバンドのサウンドを考えるとかなりヘヴィな重低音を響かせていたのではと思いそうですが、それとは逆に抜けの良いハイピッチで、また力任せのイメージとは逆に鳴りを意識したストロークを計算していたようです。

本人は木胴を好んだそうですが、メイン使用のスネアは音の大きさが常に賞賛されるボンゾなのでやはり金属シェル、LUDWIGのメタルやブラスものだったそうです。タムやバスドラムも含めて全体的にハイピッチでボトム側の方が高めにチューニングしてあるそうなので、かなり抜けてくる音作りを目指していたようです。

対照的に後期のリンゴスターは低いスネアチューニングを確立していたそうで、ボンゾもリンゴも音楽のイメージとは逆のチューニングでとても面白いですね。

はてさて、70年代当時は段ボール箱のようなスネアサウンドが流行していて、これは当時チューニング方法が確立していなかった為、音作りが下手なドラマーが多く、マイキングした際に不快な倍音が入ってしうので、それを防ぐ為にスネアのボトムヘッドを外すという技が編み出されたのですが、ボンゾはそういった流行とは一線を画すサウンドメイキングをしていたようです。

実はそのボンゾ独特の音作りはギタリストのジミーペイジと共に作り上げたのだそうで、やはりバンドサウンドの中での鳴りを考えるということが大事なんですね。

ちなみそのダンボールのような音はルーツレゲエなどのサウンドで今でもよく使われます。the rootsのような枯れたヒップホップやR&Bで使っても良いでしょう。

クラフトワークとエレキドラム

坂本龍一さんが所属する日本を代表するテクノグループと言えば勿論YMOですが、彼らが音楽性やコンセプトを決めるのにモデルとしたのがドイツのバンド、クラフトワークということはあまりにも有名な話です。

クラフトワークは電子音を音楽に用い始めた前衛音楽家シュトックハウゼンに影響を受けがら、パンクムーブメントを横目に、シンセサイザーの流通を機にテクノというジャンルを形成してゆきます。
初期メンバーには同じくドイツを代表するバンドNEU!のメンバーもいて、その音楽性が混在していてとても面白いです。メンバー入れ替えを気によりテクノな方に傾倒してくのですが、その音楽性は同時代的にはニューウェーヴというジャンルに派生し、デヴィッドボウィにも影響を与え、前述のYMOは相互的な影響下にあったとも推測されています。

クラフトワークは現在はMACを並べてほぼ音源を流しながら視覚的な作品を愉しむスタイルになっていますが(紅白でサカナクションが真似していましたね)初期はドラムを叩いていましたし、フルートがいたり、ギターがいたりするのですが、少しずつドラムもシンセドラムになり、シンセサイザー主体になってゆきます。ビート自体は同時代のクラウトロック同様シンプルでソリッドな8beatで、ピストルズのようなエモーションもなく、冷たく機械のように、それこそがクラフトワークのテーマでもありました。自らをマシーンに見たててのパフォーマンスなども少しずつ確立し、未来派としてのイメージを全面的に背負うことで人気を確立していったのです。

最近では高性能なエレキドラムもありますが、パッドをセットに組み込んだり、バスドラムだけパッドにしたりという半々くらいのセッティングがレディオヘッドやジェイムスブレイクの影響もあり多い気がします。エレクトロニカ系ではクリッチノイズや環境音との同期が必要なためにPCがエレクトロでドラムはあくまで生というパターンも多いですね。サンプリングの台頭や、DJ的なセンスという部分でも生ドラム感への回帰は00年代以降の流行でもありました。

基本的にはパッドやトリガーを組み込んだセットの場合、エレキ部分のベロシティー(音量やニュアンス)は演奏中にほぼ調整できないので、音作りから音符感など丁寧な演奏が要求されます。またクリックを使った同期演奏なども突っ込んだら終わりくらいシビアなテンポ感覚が要求されるので、クリック練習が必須になるのでドラマーは大変かもしれませんが、逆にテンポキープをクリックに預けられるので、クリックなしの演奏時に油断しがちなので注意が必要です。


クラウトロックと8beat

2010年のダモ鈴木JAPAN TOURでは渋さ知らズのヒゴさん、元フリクションのラピスさんと一緒にダモさんと演奏させてもらいました。ダモさんは2013年には六本木Super Deluxeでマーズヴォルタのオマーともやっていましたね。

ダモ鈴木は元CANのメンバーで、CANは勿論ロックレジェンドですがドイツのバンドだけ日本での知名度は米英バンドに比べて若干弱いことは否めません。

CAN、NEU!クラフトワークなどのドイツバンドを総称してクラウトロックと呼ばれていますが、ミニマルでタイトな8beatの反復を元に曲を創り上げる発想は伝統あるクラシックの国ドイツでは、エキセントリックな発想でした。

ジェイムスブラウン的なミニマリズムであり、アフリカ的なトランス感へと向かう音楽でありつつもタイトなテクノ感の高い演奏で、シンセサイザーの登場と時代を同じくして、現代的な音楽家に多大な影響を残しました。

とにかく繰り返すと時間感覚が麻痺して、変化に敏感になってゆます。
ビートは変わらず、コードも動かないで何十分も演奏したりするのですがこれが気持ち良い。そう言われるとドラム的には退屈にも感じますが、4分のPOPソングを演奏するのとは全く別の次元のものとなります。
実際にCANは一曲何時間も演奏したりしたらしく、ドラッグカルチャーと共に途方もない世界に没入していたことが伺えますね。

ミニマルでシンプルな8beatを叩く場合、曲の志向するグルーヴは各々違うので注意が必要です。
例えば比較的自然に生まれるグルーヴはスネアの部分がほんのりと後ろノリになるbeat。これは若干落ち着いたグルーヴが出ます。
他にもギターのカッティングなどが前めで裏を刻む場合は4分にアクセントをおきつつ裏をそれぞれ少しずつ前めにして少しだけ跳ねるような勢いを出したり、逆に4分を少し前めに置いてブリティッシュパンクのようなガンガン突っ走るビートにしたり、あるいはしっかりスタッカートして叩くだけでもノリが変わってきます。AメロBメロと展開するような音楽だとあまり考えなくても自然とグルーヴが出たりするものですが、反復系のbeatはしっかりとグルーヴを決めていかないと変化が少ないのでグルーヴが生み出し難いです。しっかりとまわりの音を聞いてグルーヴさせていきましょう。


ダモさんは1970年から73年までCANに在籍していて、以降長い間音楽を離れた後、マイルスデイヴィスのミュージックコンポジションから着想を得たと思われるミュージックコンポージングという考え方の元、即興演奏家として世界中を旅するようになりました。

即興演奏そのものはクラシックでバロック時代から既に演奏されていましたが、完全なフリースタイルな即興はフリージャズによって確立されていきました。あらゆる概念からも切り離されたデレクベイリーなどに代表される前衛系の即興と比べると、ダモさんは必ず歌うのでミュージックコンポージングの名を冠するに相応しいスタイルだと思います。

例えばフリージャズや現代音楽は音楽でありながら非音楽性を取り込んだり、あるいは目指そうとする傾向があります。ノイズやアンビエント、ドローンなどの雑音から音楽性を見出したり、非楽器性や非演奏性からどこまでが音楽であるかを問い、聴覚における音楽の意味やあり方を考えさせられます。
ダモさんはあくまでコンポージング(作曲)なので、そこに他の演奏者がどうアプローチするか、そこが面白みなのです。スタンダードジャズの場合、スタイルはジャズひとつなのでスタイルを習得することがゴールになるのですが、フリーな即興演奏の場合は異種格闘技であり、ボブサップ対曙、あるいはモハメドアリ対アントニオ猪木なのです(古)。しかし即興界は前衛派の人が往々にして多くカオスになることが多いので、ポップな即興→ジャム、前衛な即興→インプロと解釈されることが多いです。

CANはジャムセッションで、ダモさんはインプロですね。
とにかく決め事がないので個人的に即興演奏のコツはいかに盛り上げどこを作るか、クライマックスへ向けての構築が肝ではないかなと思います。

James Brownのグルーヴ

James Brownと言えばファンクというジャンルを確立したことで有名な人で、最高のシンガーでありパフォーマーですね。繰り返されるリフ、シンプルなコード進行でダンサブルなリズム、西洋的な音楽性とは一線を画する黒人音楽ですが、初めはリズム&ブルースを演奏していたJBと彼のバンドが少しずつ確立していった音楽スタイルでした。
特にジョンスタークスのドラミングはかっこ良く、ドラムのビートだけでも踊れて最高にクールでした。

さて60年代にout of sightなどの楽曲でファンクバンドとして人気だったJBでしたが、大幅なバンドメンバーの交代を経てからゲロッパ!で有名なSEX MACHINEという曲ができあがります。

このグルーヴ感が半端じゃない。

シャッフルのリズムとあまりはねてないリズムが同居していてゆらゆらと揺れるリズム、まさにこれこそアフリカ的なポリリズムと言われた複合リズム音楽でした。
このコード進行もなく、繰り返されるギターカッティングとグルーヴィーなリズムセクションの絡みが絶妙で最高に気持ち良いのです。

黒人のリズムがすごいすごいと言われる理由はここにあるのです。
この複雑なリズム感がなかなか再現するのが難しいのですね。

このノリはJBの前ノリ感、ギター絶妙なキレと跳ね、ドラムの裏の取り方、パーカッションの訛らせ方、が複雑に絡み合えのですが、本質はやはりJBのエネルギッシュなボーカルに対応していったことなんではないだろうかと思います。

jazzやhip hopまで黒いグルーヴ感はとてつもなく、何度演奏してももっさりしてしまうような曲でも、ガンガン踊れる曲になってしまいます。

JBはやはり偉大です。