クラウトロックと8beat

2010年のダモ鈴木JAPAN TOURでは渋さ知らズのヒゴさん、元フリクションのラピスさんと一緒にダモさんと演奏させてもらいました。ダモさんは2013年には六本木Super Deluxeでマーズヴォルタのオマーともやっていましたね。

ダモ鈴木は元CANのメンバーで、CANは勿論ロックレジェンドですがドイツのバンドだけ日本での知名度は米英バンドに比べて若干弱いことは否めません。

CAN、NEU!クラフトワークなどのドイツバンドを総称してクラウトロックと呼ばれていますが、ミニマルでタイトな8beatの反復を元に曲を創り上げる発想は伝統あるクラシックの国ドイツでは、エキセントリックな発想でした。

ジェイムスブラウン的なミニマリズムであり、アフリカ的なトランス感へと向かう音楽でありつつもタイトなテクノ感の高い演奏で、シンセサイザーの登場と時代を同じくして、現代的な音楽家に多大な影響を残しました。

とにかく繰り返すと時間感覚が麻痺して、変化に敏感になってゆます。
ビートは変わらず、コードも動かないで何十分も演奏したりするのですがこれが気持ち良い。そう言われるとドラム的には退屈にも感じますが、4分のPOPソングを演奏するのとは全く別の次元のものとなります。
実際にCANは一曲何時間も演奏したりしたらしく、ドラッグカルチャーと共に途方もない世界に没入していたことが伺えますね。

ミニマルでシンプルな8beatを叩く場合、曲の志向するグルーヴは各々違うので注意が必要です。
例えば比較的自然に生まれるグルーヴはスネアの部分がほんのりと後ろノリになるbeat。これは若干落ち着いたグルーヴが出ます。
他にもギターのカッティングなどが前めで裏を刻む場合は4分にアクセントをおきつつ裏をそれぞれ少しずつ前めにして少しだけ跳ねるような勢いを出したり、逆に4分を少し前めに置いてブリティッシュパンクのようなガンガン突っ走るビートにしたり、あるいはしっかりスタッカートして叩くだけでもノリが変わってきます。AメロBメロと展開するような音楽だとあまり考えなくても自然とグルーヴが出たりするものですが、反復系のbeatはしっかりとグルーヴを決めていかないと変化が少ないのでグルーヴが生み出し難いです。しっかりとまわりの音を聞いてグルーヴさせていきましょう。


ダモさんは1970年から73年までCANに在籍していて、以降長い間音楽を離れた後、マイルスデイヴィスのミュージックコンポジションから着想を得たと思われるミュージックコンポージングという考え方の元、即興演奏家として世界中を旅するようになりました。

即興演奏そのものはクラシックでバロック時代から既に演奏されていましたが、完全なフリースタイルな即興はフリージャズによって確立されていきました。あらゆる概念からも切り離されたデレクベイリーなどに代表される前衛系の即興と比べると、ダモさんは必ず歌うのでミュージックコンポージングの名を冠するに相応しいスタイルだと思います。

例えばフリージャズや現代音楽は音楽でありながら非音楽性を取り込んだり、あるいは目指そうとする傾向があります。ノイズやアンビエント、ドローンなどの雑音から音楽性を見出したり、非楽器性や非演奏性からどこまでが音楽であるかを問い、聴覚における音楽の意味やあり方を考えさせられます。
ダモさんはあくまでコンポージング(作曲)なので、そこに他の演奏者がどうアプローチするか、そこが面白みなのです。スタンダードジャズの場合、スタイルはジャズひとつなのでスタイルを習得することがゴールになるのですが、フリーな即興演奏の場合は異種格闘技であり、ボブサップ対曙、あるいはモハメドアリ対アントニオ猪木なのです(古)。しかし即興界は前衛派の人が往々にして多くカオスになることが多いので、ポップな即興→ジャム、前衛な即興→インプロと解釈されることが多いです。

CANはジャムセッションで、ダモさんはインプロですね。
とにかく決め事がないので個人的に即興演奏のコツはいかに盛り上げどこを作るか、クライマックスへ向けての構築が肝ではないかなと思います。